esotoノLetterノ
#01
2026-06-10

宿場 esoto の物語は、いつも水から始まります。
卓に注がれる七賢の一杯も、蔵風呂に張られる湯も、朝の膳を炊きあげる白米も。
そのすべての奥底に、白州の水が流れています。
その水が生まれる場所を、私たちは「水源地」と呼んでいます。
南アルプス・甲斐駒ヶ岳の懐に湧く、千ヶ淵。
宿場 esoto の滞在では、この水源地までお客様をお連れするひとときをご用意しております。
宿場からほど近い、けれども、まったく違う空気の流れる場所へ。
この Letter では、その水源へと向かう小さな旅路を、文字のうえでお辿りいただきます。
駒ヶ岳神社の鳥居をくぐり、尾白川の吊り橋を渡り、花崗岩の川床にたたずむ千ヶ淵まで。
およそ十数分の、水の記憶にふれるひとときを、どうぞ静かにお読みください。
七賢の酒造りにおいて、水は原材料のひとつではありません。
むしろ、酒の魂そのものと言ったほうが近い存在です。
米も、麹も、酵母も、すべてはこの水に応えるかたちで選ばれています。その水の声を最も澄んだかたちで表すことが、白州の造り手たちが二百七十余年にわたり、続けてきた仕事でもあります。
水は、私たちが酒造りで最も大切にしているもの。
自然の豊かさと、水への思いを、どうぞ現地でお感じいただければと思います。

― 水源地ご案内より
「白州」という地名は、清らかな川原に広がる、白い砂礫に由来すると言われています。
南アルプスから流れくだる雪解け水と伏流水が、町のいたるところで湧き、流れ、木々を潤していく。
水の音が絶えない土地。
それが、白州です。
山梨県北杜市白州町は、日本でも有数の名水の地として知られています。
町を歩けば、木々や岩の肌にしっとりと苔がまとわりつき、空気そのものが、どこか湿り気を帯びていることに気づかれるでしょう。
それは、この土地がいかに水に恵まれているかを伝える、静かな証しです。
南アルプスに降った雨と雪は、花崗岩の地層を、およそ二十七年という長い時をかけて旅していきます。
その旅の果てに湧きあがるのが、七賢の酒の源となる伏流水。
硬度およそ二十。口当たりのやわらかな、超軟水です。
水源地までは、宿場 esoto からお車で数十分。
現地では、およそ十分から十五分の無理のない散策をご案内いたします。
駒ヶ岳の登山口へと続くこの道は、古くから多くの人が水を求めて歩いてきた、白州でもっとも静かな場所のひとつでもあります。
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水源地・千ヶ淵まで、三つの情景をたどっていきます。
急がず、耳を澄ませて。
歩く速さのままに、水の気配が少しずつ濃くなっていきます。
散策のはじまりは、駒ヶ岳神社の鳥居の前から。
甲斐駒ヶ岳の登山口にもつながるこの神社は、古くから山岳信仰の拠点として、多くの登山者や旅人に親しまれてきました。
山に入る前に、安全を祈る。
水を戴く前に、手を合わせる。
静かな鳥居の下で、まずは一礼をしていただければと思います。
耳をすませば――
杉木立の梢を渡る風。
遠くから届く、小鳥の声。
神社から少し進むと、眼下にひらけるのが尾白川です。
日本名水百選にも選ばれる、透明度の極めて高い川。その上に、揺れる吊り橋がひとつ架かっています。
橋の上から見下ろすと、川底の白い花崗岩が、水を通してくっきりと浮かびあがって見えるはずです。
足もとの音――
吊り橋のきしみ。
遠くの瀬音。
水しぶきの、ささやき。
橋を渡り、しばらく歩くと、いよいよ水源地・千ヶ淵に到着いたします。
見上げれば、深い緑。
見おろせば、澄みきった淵。
川底に敷きつめられた白い花崗岩は、天然のフィルターとして働き、水にほどよいミネラルの均衡と、絹のようになめらかな肌ざわりを与えます。
硬度およそ二十。
まさに、七賢の酒の源そのものです。
水にふれる――
指先で、そっと。
冷たさよりも、柔らかさが先に届きます。

二十七年の旅ののちに湧きあがる水は、七賢の酒として、宿場 esoto の一夜のなかへと清らかに流れ込んでいきます。
その長い旅路を思うと、卓に置かれた一杯の意味が、少し違って見えてくるはずです。
宿場 esoto が、「浸るように泊まる」と申しあげるのは、この土地の水に、ただ静かに身を委ねていただきたいから。
飲み、浴び、味わい、耳をすます。
その四つのふるまいのすべてに、白州の水が寄り添っています。
次号以降の Letter では、白州の田んぼで育まれる酒米、そして、三百年の蔵に息づく醸造の営みへと、水の旅路を辿ってまいります。
水は、あらゆるものの、はじまりです。
その静かな流れを、これからも一緒にたどっていただければ幸いです。
宿場 esoto / 白州・千ヶ淵
Letter vol.01
水源をたずねる|白州、千ヶ淵まで|